妊娠しやすい精子濃度と精子運動率

受精に必要なのは、理論的に考えると1つの卵子に対して1匹の精子がいれば可能ということになります。しかし自然妊娠するためには、そううまくはいかないでしょう。

では、妊娠するために必要な精子の量はどのくらいなのでしょうか。WHOが設定している正常値は、精子濃度が1500万/mlで、精子運動率は40%以上となっていますが、通常、妊娠しやすいといわれているのは精子濃度が4000万/mlで、運動率は50%以上となります。

この値に満たない場合は自然妊娠がしにくい状態と判断されるため、精子の数を調整して子宮内に送り込む人工授精を行うところが多いですね。ちなみに、人工授精は精液の中の精子の数を集めて子宮内に注入するものなので、痛みもなく、比較的抵抗が少なく治療ができます。

最低数はどのくらい、というのは非常に難しいのですが、過去の事例では精子濃度300万/ml、運動率40%ぐらいの方でも自然妊娠することができたということもあります。専門書や教科書などでは精子濃度150万/mlを下限だとしているようですが、実際の現場ではこの数で自然妊娠をすすめる医師はいないと考えます。

可能性がないわけではないですが、妊娠できるのはかなり珍しいケースではないでしょうか。また、不妊で検査をした場合、精子濃度が6000万/mlで、精子運動率が60%を超えているようなら、男性側の原因はほぼないと考えてよいでしょう。

精子の数や活発かどうかのみが判断基準ではありません。精子が正常かどうか、その質に関しても問われます。しかし、精子濃度や運動率が低い場合は、精子自体にもなんらかの異常がある場合が多いのです。

精子の数は正常値で運動率が少し低めの場合、「総運動精子数=精液量×精子濃度×精子運動率」については正常値になりますが、なぜか妊娠しにくいということもあります。

こういうケースでは、尻尾の方だけが少しだけ動く精子が多く、まっすぐに直進して泳ぐ「直進精子」が少なかったり、精子自体の質があまり良くないために妊娠できないということあるため、数が全てではありません。

さて、精子の質が悪いというのはどのようなことでしょうか。それは「精子の頭部にあるDNAが損傷している」ということになります。精巣上体や精管に長い間いたような精子は、その途中でDNAに損傷を受けていると考えることができます。DNA部分に損傷があると、受精しても着床しなかったり、受精卵が成長しないということが起こります。

ちなみに、医学生の有志が精液検査を行った結果、精子濃度2億/mlを超える人や、精子濃度が0だった方もいますが、23歳前後の男性200人の中間値は精子濃度7000万/ml、精子運動率が68%ほどとなりました。精液検査で精子濃度が30万/mlときくと、あまり知らない人は「そんなにいるんだ!」と思ってしまいますが、実際には何千万/mlといるのが普通ですので注意が必要です。

それだけの数がいても妊娠が難しいのですから、受精が起こるというのはとても大変なことなのですね。

 

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