染色体異常も精子形成に影響する

不妊症検査において、染色体検査は全ての人に対して行うものではありません。無精子症、もしくは高度乏精子症の方に対して行われるのが一般的です。

ヒトの染色体は46本あり、うち44本が常染色体、あとの2本が性染色体です。常染色体の異常はどのようなものかというと、2か所以上で切断された染色体が、他の染色体と結合してしまい転座してしまう「相互転座」や、同じ染色体の中で2か所が切断していて、中間の部分が逆転して再結合してしまっている「逆位」、染色体13、14、15、21、22の間で短腕をなくし、長腕同士が融合してしまう「ロバートソン転座」などがあります。ちなみにロバートソン転座は染色体が45本となります。

このような染色体異常によって精子形成がうまくできない事例がいくつもあります。染色体に異常が認められるケースは、1/660人の割合であるようです。正常な男性の性染色体はXYですが、中には48XXY、48XXXYなどXを多く持つクラインフェルター症候群の方もいます。このような方は無精子症であり、精巣萎縮や乳房が膨らむ女性化乳房などが見られることもあります。また、外見は男性であるものの、染色体は女性である46XX male だという事例もあります。

染色体異常は男性の不妊の原因である可能性があるため、妊娠するかどうかを調べる際や、体外受精、顕微授精を行うかどうかの判断材料とされます。特に、Y染色体上にあるAZFという遺伝子がわずかに欠けていることによっても不妊の原因となることがわかってきました。AZFにはa、b、cという領域に分かれており、それぞれどこが欠失しているかにより、精子形成不全のタイプが違います。そのため、最近では、このAZF遺伝子の検査を行い、適した治療を模索することもあります。また、胎児の段階でY染色体が欠失しているかどうかを調べることはできなくもないのですが、現在の日本ではまず行われていません。

不妊で悩む男性の方は、こういった遺伝子の欠失のことをあらかじめ勉強している方も多く、Y染色体上の遺伝子領域であるDAZ領域の欠失について知りたいという方もいますが、DAZ領域はAZFc領域の一部であるため、DAZ領域のみ検査をしても意味はないというわけです。

欠失した場合の影響例をあげると、AZF遺伝子c領域だけ微小欠失が起こっている場合は、精子を採取できることが多いため、補助生殖技術により妊娠できるかもしれません。ただし、男児が生まれた場合、遺伝リスクは100%といわれているため、子供も男性不妊となる可能性がかなり高いです。そして、AZF遺伝子a領域に欠失がある場合、精細胞が全くないという「セルトリ細胞単独症」となり、b領域が欠失している場合は、成熟停止となることがわかっています。46XX male の方はAZF遺伝子のすべてが欠失しているため、精子や精子細胞を得ることは不可能なのです。

このような情報を一般の人間が理解するのは難しいことですが、少しでも多くの知識を身に着け、治療方針などに納得しながら進めていくことは非常に重要なことです。治療していく上でわからない点があったら、医師に聞くなどして疑問点は解消しておくようにしましょう。

 

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