乏精子症の場合に行う治療法とは

乏精子症とは、精液内の精子の数が少ないことをいいます。具体的な数値でいうと、射出精液中の精子濃度が、2000万/mlよりも低い場合を指します。人によってその数値は異なりますが、定められた標準値からわずかに低いという方や、精子がほぼ認められずゼロに近い方もいます。

この症状のときは、まず身体的に異常がないかどうかを確かめます。しかし異常が特に見当たらない場合で、卵胞刺激ホルモンFSHの値が高い場合は、治療が難しくなります。造精機能が低下していて、それが原因不明だということがあるのです。このような方へは精子の受精能力を高めたり、精巣の血流を良くするなどの効果が期待される補中益気湯などの漢方や、ビタミンB12やビタミンCなどを投与する非内分泌療法を行います。この治療は昔から行われており、劇的に効くというわけではありませんが、何もしないよりはした方が効果が出るかもしれないということを医師がわかっているために行われることが多いのです。

精液検査の結果は、その日の体調などで左右されるため、その時々で数値が良かったり悪かったりと上下するものですので、医師は精液検査の数値を上げることを目的にするのではなく、妊娠しやすくさせることを重点に置いて治療を考えます。このような漢方を処方することにより、検査結果の数値は変わらなくても、その精子の質は上がっているということもあるのです。精子はおよそ3か月弱ぐらいで作られるため、こういった治療の場合は長く続けることが重要です。

また、FSH、LHなどのホルモン値が正常である、またはやや低い場合は、精巣へのホルモン刺激を強め、精子形成の働きを助けるため、抗エストロゲン剤などで内分泌療法を行うことがあります。抗エストロゲン剤を使用する場合、長期間の投与は肝臓に負担を与えるため、比較的短期間で行われます。この療法は精子濃度が500万/ml以下ととても精子が少ない方に対して行うことが多いです。

どうしても子供がほしいとか、年齢的にリミットが近づいていると思われる方については、この治療と併せて人工授精を行うことをおすすめします。人工授精は、その言葉のイメージから生命を人の手でつくるという、倫理的な問題を孕んでいるかのような印象を与えますが、精液内の精子を集め、子宮内へカテーテルで精子を注入するという、とても自然妊娠に近い手法なのです。精子濃度は高くなりますし、精子が過酷な状況となる膣内を通ることもありませんので、精子が卵子まで到達する可能性も高くなります。かつては、射出された精液を直接、子宮に注入するという手法でしたが、妊娠率があまり上がらず、精液に細菌などが混入して女性が感染してしまう危険性があったため、最近では洗浄した精液を使います。

現在、どのように人工授精用の精子を集めているかというと、濃度勾配で良質の精子を分離する方法(パーコール法)や、元気のいい精子が精液の上の方まで泳いでくるという性質を利用して集める方法(スイムアップ法)などが一般的です。人工授精の妊娠率は行う施設によってまちまちですが、だいたい10%前後と考えておくとよいでしょう。あまり高くないと思われるかもしれませんね。この人工授精を5~10回行っても妊娠の兆候がない場合、体外受精を検討するカップルが多いです。また、精子濃度が1000/ml、精子運動率が40%を下回る方については成功率が極端に低くなりますので、人工授精を行わず、体外受精が顕微授精から行う場合もあるようです。

人工授精は、男女両方に不妊の原因が見つからないときにも行われることがあります。人工授精は保険適応外なのですが、1回あたりにかかる費用は1~3万程度です。副作用も少なく自然に近い、また毎月行うことができる手法なので、今までは抵抗のあった方も受けてみてはいかがでしょうか。

 

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