精索静脈瘤と不妊の関係性

男性不妊症の方の3割ほどに、精索静脈瘤が発見されます。精索静脈瘤とは、精巣の静脈に血液が逆流し、静脈が膨らんでこぶのようになっている状態を指します。これがあることにより、精巣の温度が高くなり精子がうまくつくられないなどの弊害があると考えられています。この静脈瘤を治療することで不妊が改善したという例も多く、精索静脈瘤のある男性不妊症患者においては、不妊の治療として静脈瘤の手術が行われています。実際に手術が行われた540例ほどの中では、術後に精液の数値が改善した例が57%、妊娠した例が36%であったという報告もあるほどです。

しかし、精索静脈瘤によって無精子症にまでなる例はごくわずかだと考えられます。無精子症と精索静脈瘤に関係性があるかどうかは微妙であり、不妊の治療として手術を行うのがよいのかというと、そうとも言えません。無精子症の患者で、精索静脈瘤を持っているときは、まず精索静脈瘤の治療を行い、1年ほど経過観察をしたのち精子の数が増えなければ、無精子症の治療をするという医師が一般的です。ただし、早く子供がほしいという方が多いため、この静脈瘤の治療は後回しにして、無精子症の治療を先に行うことも多いようです。この場合、精索静脈瘤でありながら顕微授精を先に行っている方の中で顕微授精の結果が思わしくないときには、静脈瘤治療後に結果がよくなるという場合もありますので、先に治療をすすめることもあります。

精索静脈瘤の治療は乏精子症の方に対して行うのが一般的です。医師から患者への事前説明においては、治療によって精子濃度や精子運動率が上がる確率はだいたい50~60%ほどだと伝えます。ただ、研究上では治療後に精子のDNA損傷が少なくなることがわかっており、精子の質は治療後の方が良くなる例もかなりあります。

手術法としては、内精索静脈を鼠径管から上で切断する「高位結紮術」という手法や、鼠径管の下で切断する「定位結紮術」というものがあります。高位結紮術では、腹腔鏡下手術で行うことが多いのですが、術後にリンパ液が陰嚢につまって膨らんでしまう陰嚢水腫を合併する可能性が高いことから、低位結紮術で行われることが多いです。

低位結紮術のときには、手術用の顕微鏡を使用することが一般的で、この手術のメリットは比較的痛みが少なく、陰嚢水腫を合併する危険性や、静脈瘤の再発も少なく、手術痕も1~2cmほどと小さく済みます。また、精巣動脈周辺の細い静脈を確実に処理でき、しかもリンパ管の温存も容易にできることがあげられます。40代に突入した不妊の方でも、この手術を行うことにより精子濃度や運動率が上がったという例もあります。

手術のあと、どのくらいの期間で改善がみられるかですが、最低でも3カ月ほどは見ておく必要があるでしょう。個人差もありますが、6カ月ぐらいから改善がみられる方もいますし、1年ほどで数値が正常値にまで一気に上がる方もいます。術後の方が人工授精や体外受精が成功しやすくなるという例もありますから、急いでいる方は術後すぐにこれらの方法を検討してもよいでしょう。

 

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