無精子症の診断と精路再建術

精液検査において、射出された精液の中に1匹の精子も確認できない場合、無精子症と診断されます。これは、たとえ精巣では正常に精子がつくられていたとしても、精液中に見当たらなければ同様の診断となります。精子ができないことが無精子症である、とうわけではありません。

精巣では精子がつくられていて、精巣上体や精管などに異常があるために精子が出てこられないときは「閉塞性無精子症」と呼びます。精巣に異常があり精子がつくられないときは「非閉塞性無精子症」と呼びます。どちらも無精子症ではありますが、その治療法はかなり違います。

どちらの無精子症であるかは、診察と検査で判断します。深く関係しているのが採血でわかるFSH(卵胞刺激ホルモン)値と、精巣容量、閉塞起点があるかどうかです。造精機能が正常に働いているかの判断は、だいたいの場合、血清FSH値が指標となります。FSH値が正常であるにもかかわらず、無精子症の方は、精子は正常につくられていても出ることができない「閉塞性無精子症」の場合が多いのです。また、FHS値じたいが低い場合、または逆にとても高い場合は、「非閉塞性無精子症」と判断してほぼ間違いありません。精巣の大きさや閉塞起点を同時に考えることで、90%ぐらいの確率で判断が可能です。

しかし、FSH値は正常、精巣容量も正常、かつ閉塞起点もないというのに、精子形成の途中段階でストップしてしまう精子形成障害というものの少なからずあります。こういった症例のときは、精子形成の過程が、精母細胞、精子細胞の段階で止まってしまう成熟停止が起こります。「閉塞性無精子症」と診断された場合、だいたい10%ほどにこの成熟停止の方が含まれています。この成熟停止は「非閉塞性無精子症」であり、無精子症の中で15~20%の方が「閉塞性無精子症」、80~85%の方が「非閉塞性無精子症」と診断されているようです。

「閉塞性無精子症」の治療は、途中でつまりを起こしている箇所をバイパスします。「精路再建術」を行うというわけですね。これで精子は精液とともに外にでることができるので、自然妊娠が望める確率はぐっと上がります。こういった症状の方は、精路再建術を施すことによって、とても自然な形で妊娠することもできますし、子供がたくさんほしい、という望みをかなえられるかもしれないので、積極的に行いたいところですが、精路再建術にはかなりの技術を要し、現在でもこの手術を行える医師が少ないという点が心配です。

精路再建術よりも確実で簡単に行われているのが、精巣や精巣上体から精子を取り出して行う顕微授精です。そのため、こちらの方法を勧める施設も多いでしょう。精路再建術の話もしたうえで顕微授精を選択しているのなら問題はないのですが、中には精路再建術があるということを知らぬまま、顕微授精をする方もいるようなので注意が必要です。

ちなみに、いったんは子供をつくったあとに、避妊の手段としてパイプカット(精管結紮)の手術を受けたとき、その後の再婚などで再び子供がほしくなった場合、精管精管吻合術によりつなぎなおすこともあります。切断された部分は触診で確認することができ、術前につなぎなおせるかどうかの判断もほぼできます。

この場合の再開通率は8割~9割ほどで、術後の自然妊娠率は5割~6割と比較的高めです。しかし、確実に吻合するためには高い技術が必要ですし、精子がいない場合や、閉塞期間が長かった場合は、開通率、自然妊娠率ともに低くなります。精管を切断したあとに長期間、精管閉塞の状態が続いた場合、別の精巣上体閉塞や破裂が生じる可能性もあります。

そのため精管精管複合術とともに、精巣上体精管吻合術を行わなければならないこともあります。少し妊娠する確率は低くなりますが、精管切断による精路閉塞の場合は、再建したあとの妊娠率は良好とみられるので、精管精管吻合術を行ってみて自然妊娠ができるようにするべきだと考えます。

 

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