日本と海外の吻合術事情について

鼠径ヘルニア(脱腸)手術後の閉塞に対しても精管精管吻合術は行われます。両側鼠径ヘルニアの手術を行った場合、おへその近くの、比較的高い位置にある内鼠径輪付近で閉塞していることが多いため、精管の長さや状態、技術の難しさなどから、手術前に吻合できるかどうかを判断することはとても難しいといわれています。

そして、閉塞期間が長ければ長いほど術後の開通率はあまり良くないので、術前に体外受精や顕微授精も同時に行うことを検討する必要があります。

精路再建術の方法には、精巣上体精管吻合術もあります。精巣上体での閉塞原因としては、先天性のものに加え、精巣上体炎や、副鼻腔気管支症候群のひとつであるヤング症候群であることが多いです。

精巣上体管の側壁と精管の断端をつなぐ手術が一般的ですが、その後の開通率は4割~7割、妊娠率は3割~5割となっています。吻合術中に精巣精子や精巣上体管から流出する精子が採取できるようなときは、凍結保存をしておくと、術後に開通しなかったときに体外受精や顕微授精にスムーズに移行することができるでしょう。

精路再建術では、その技術の難しさや、再建術後の開通率や妊娠率、配偶者の年齢なども考慮して、体外受精や顕微授精を併用することも検討しなければなりません。そのため、医師とじっくり相談することが大切です。

精管精管吻合術は症例が多いこともあり、最近では成功例も多くなってきているようです。しかし、精巣上体精管吻合術はそれよりも難しい手術となるため、その後の妊娠率は横ばい状態です。ですから、現在では精巣上体管の閉塞であると思われるときは、まず精巣で精子がつくられているかを確認(5mmほどの小切開で、10分程度の精巣生検を行う)し、成熟停止ではないと判断されたら精子を凍結保存、もしもの顕微授精に備えます。

そして、患者の同意があれば精巣上体精管吻合術を行う、というやり方もあります。精管精管吻合手術は両側で3時間ほど、精巣上体精管吻合は5時間ほどかかり、それだけ聞いてもかなり難しい手術であることがわかるでしょう。

アメリカは精路再建術が最も進んでいる国です。しかしそのアメリカの中でも、最高の技術力を持っていて、患者がそのドクターにお願いしたいと思えるほどの成績を残している方はごくわずかです。さらに、手術費用がかなりの高額で、とある施設では精管精管吻合術が約3万ドルもするとのことでした。

日本においても、この手術を得意とする医師は数人おりますが、年々、その数は減少しています。なぜなら、医師が高齢になってくると、顕微鏡を使っての長時間手術がだんだんと難しくなり、またこの手術に対するトレーニングを踏む場も少ない、といったことがあるからです。

また、精管結紮術(パイプカット)後の吻合術については、基本的に保険は適用になりません。だいたい40万円程度、もし保険が適用になれば自己負担で10万円ほどかかります。成人男性のうち避妊手術として精管結紮術を受けている方は、人口の割合に対してオーストラリアで33%、アメリカで13%であり、日本は1%にも満たないそうです。

オーストラリアは精管結紮を受ける率が高いのですね。その分、精管精管吻合術を受ける率も高いのではと思いますが、体外受精や顕微授精の自己負担がほぼないため、吻合術を受けられる方はとても少ないとのことです。

症例数の多いアメリカの医師が、いちばん技術に長けていると思いますが、実は器用な日本人医師はこの手術に向いているのではと考えます。症例数が多くなれば、それだけ場数が踏めますので、これからの医師の技術向上に期待したいところですね。この治療が一般的になり、成功例も増えると、女性の負担もかなり軽くなるでしょう。

 

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