閉塞性無精子症の精子の採取方法

不妊治療の際に、女性が40歳以上など比較的高齢である場合で、女性側因子のあるときは、男性の精路再建術を施すのではなく、精巣、精巣上体から直接精子を採取して、顕微授精を行うという方法もあります。

閉塞性無精子症の方は、精巣では精子がつくられているのですから、精巣を切開すれば精子を採取することはわりと簡単にできます。どのように採取するのかですが、皮膚の上から針でついて取り出す方法や、5mmほど小さく切開して目視で取り出す方法があります。どちらも局所麻酔で済みますし、日帰り手術もできます。採取の時間は10分ほど。費用としては保険適応外となり15万円ぐらいかかります。

精子を採取するといっても、実際に採取するのは精子そのものではなく、精子がつくられる精細管という管です。採取後にこの管をばらして精子だけにします。また、採取後に凍結する必要がある場合は、凍結の費用も上乗せしてかかるので注意してください。

採取後の痛みについても気になるところですよね。精巣の外側にある精巣白膜は、下腹部に猛烈な痛みを与える箇所でもあるのですが、切開距離としては3mm程度なので、切開後1日ぐらいは下腹部に痛みを感じますが、軽度のものです。切開距離が長いほど痛みが強いと思われるので、手術の上手な医師にあたると痛みも小さくなるでしょう。

精巣上体から精子を取り出すやり方もあります。精巣でつくられた精子は運動率が30%ほどですが、精巣上体を経由すると運動率が上がり80%ほどになります。精巣上体は、精子に元気を与える臓器なんですね。顕微授精を行う場合、精子の動きは止めることになるので動きがよいかどうかは関係ないように感じますが、非運動精子を使った顕微授精はその成績が芳しくないので、動きの良い元気な精子を使ったほうがよいと思われます。

精巣上体から精子を取り出すときも、針で取り出す方法や、陰嚢皮膚を3~5mmごど切開し、手術用の顕微鏡を使用して精巣上体管を確認しつつ精子を採取する方法があります。精巣上体は、精巣側から頭部、体部、尾部と呼びますが、この中で尾部において精子の運動能力はいちばん高くなります。

臓器というものは、切開することで炎症が起こり、自然に治癒しようとします。精巣上体管から精子を回収すると精巣上体管が閉塞する可能性があります。また精巣上体が感染してしまうと、発熱して大変なことになる場合もあります。精管に閉塞がありこの方法で精子を回収したとしても、閉塞箇所が2か所になり次の手術がさらに難しくなる場合も考えられます。また、精巣上体精管吻合では、尾部、体部、頭部の順番に再開通率の成績が悪くなります。

こういったリスクを充分に説明せず、精巣上体精子の採取をすすめる医師もいるようですが、今後、精路再建術は受ける予定が全くない、ということがないかぎり、本術式は避けたほうがよいでしょう。閉塞性ならば、精巣精子でも大量に採取することはできます。採取した中で運動精子を選び、顕微授精をすればよいのですから。

30年以上などの長期間、閉塞が起こっていて、造精機能も低下していて、精巣精子もほぼ不動の精子であれば、精巣上体精子の採取も検討することになります。しかし精巣精子を使った顕微授精と、精巣上体精子を使った成績を比較してもどちらが優れているということもないため、精巣精子を採取するほうが安全かもしれません。

精巣精子を使った顕微授精は、男性の精巣精子採取の日と女性の採卵する日を合わせて同時に行う方法と、男性の精子を先に採取しておき凍結させて、女性の採卵の日に合わせて融解する方法の2種類があります。閉塞性無精子症の場合、現在ではどちらの方法がより良い、ということもありません。なので、何が何でも同時に行った方がよい、というわけでもないのですが、精子を凍結、融解させて使用することは何かしらダメージがあるという可能性も捨てきれません。

とはいえ、男性の精子を採取する段階で、回収できないということも考えられますので、まずは元気な精子が回収できたということが確認できてから、女性の採卵を行う、といった流れで問題ないでしょう。

また、精子がつくられているということは、精路再建術で自然妊娠を目指すこともできますので、若い夫婦の方などは、男性がこちらの手術を受けるという選択も視野に入れておきましょう。

 

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