精子のいる精細管の特徴

精巣内の精巣管では、精子形成が行われている管もあればそうでないものもあるとご説明しましたが、このことについては1995年頃にすでに発見されていました。しかしどの精細管で精子がつくられていて、つくられてない精細管はどれなのか、というのはわからないままだったのです。

1998年に、コーネル大学(ニューヨーク)のあるグループが、手術中に精細管を観察し、どの精細管に精子がいるのか、1本ずつ確認する作業を行いました。精細管はとても細く、目で見ても判断することができません。そのため手術用の顕微鏡で15倍ほどに拡大して観察しました。このことでわかったのが、精子のいる精細管は「太くて、蛇行しており、白濁している」という確率が高かったのです。

この手術は「顕微鏡下精巣精子採取術」と呼ばれ、日本ではMD-TESEと一般的に呼ばれていますが、世界ではmicro TESEと呼ばれています。この方法が普及するまでは、精巣からいくつかの精細管を無作為に取り出し、精子がいたら顕微授精に使ったのですが、この方法により、確実に採取できる確率も上がりました。この方法が行われるようになったのは10年ほど前からで、日本においても2000年ぐらいからこの方法が採用されてきましたが、行えるのは数十人ほどの医師と、かなり少ないのです。

なぜなら、こういった顕微鏡下の手術は敬遠する医師もおり、若い医師で手術をできるようになる人もなかなか育っていません。これまで不妊治療を行うのは婦人科医が多かったため、無精子症で非閉塞性の方には、配偶者以外の人との人工授精を勧められることもよくあったのです。

医師も、そうとうな症例数を経験しないと、精細管を見て判断できる目が養われないと考えます。海外の技術を日本に持ち帰り、同じように手術を行っても精子の回収率があまり上がらない時代がありました。しかし、症例数を重ね、精子回収率は45%ぐらいまでアップすることができたのです。

この技術が日本に伝えられて10年。この技術をもっと一般化し、成功率をあげるためには、熟練した医師のみが技術を習得するのではなく、それを若い医師に伝えていくことが重要なのです。

 

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