日本で凍結精子が使われる理由

閉塞性無精子症の場合、凍結した精子を使っても、新鮮な精子を使っても、ほぼ結果には差は出ないとご説明しました。しかし、非閉塞性無精子症の場合は、事情が異なってきます。

うまく精子が採取できたとしても、基本的に造成機能が低下している精巣でつくられた精子の質はよくありません。さらにその精子を凍結し、融解することで、質のよい精子が減少したり、なくなってしまうことがあるからです。現に、アメリカやオーストラリア、ヨーロッパの各国では、非閉塞性無精子症に対して凍結精子を用いることはほぼありません。必ず、女性の採卵に合わせてmicro TESEを行います。そして、新鮮な精子を使った方が結果もよいというデータもあります。しかし、このような場合、日本では凍結精子を使うことが一般的なのです。いったいそれはなぜなのでしょうか。

日本の問題点、それは精子バンクについてです。日本には精子バンクは存在しません。ただし、非配偶者間の人工授精ができる認定施設があります。その場合、顔写真や学歴、人種や性格などは選ぶことができません。アメリカやオーストラリアでは、micro TESEで精子が採取できなかった方は、精子バンクを利用することが多いです。

日本にはこのシステムがないため、もし女性が採卵しても精子が採取できなかった場合、その卵を活かすことができません。実際に50%以上は無駄になってしまっています。micro TESEをしたからといって、必ず精子が採取できるというわけではないため、採取できなかったとしても採卵にお金をかけなければならない、ということになります。現時点では、万能細胞から精子をつくる技術を期待して卵を凍結するなどといったことは、あまり意味がないと考えます。もし、精子回収率が70%ほどあるとしたら、顕微授精の成績を説明し、納得してもらったうえでmicro TESEと同時の採卵をおすすめするところですが、いまのところの精子回収率は45%程度しかありません。

そのような事情もあることから、日本で行われてる順序としては、micro TESEで精子を見つけて凍結、そして女性側の卵巣を刺激して採卵、ということになるわけです。

しかし、中にはほぼ全てにおいてmicro TESEと採卵を同時に行っているような施設もあります。卵巣刺激の費用が保険適用になり、もう少し金銭的負担も減るのであれば、この方法が一般的になるかもしれません。

また、考えられる問題点は他にもあります。不妊クリニックが婦人科主体のため、男性不妊専門医との連携が取りづらい点です。女性の採卵の日程というものは、微調整は可能としても、大きくずらすのはかなり難しいことです。男性不妊の場合は専門医が常勤していることはほぼないため、日程を合わせることができないのです。大学病院などの大きな施設になれば常勤医はいると思いますが、そういった病院は休日診療を行うなどという調整も難しいため、不妊治療臨床には不向きだと考えます。

理想的なのは、女性の卵巣刺激を行って、採卵の日程が確定した段階で、その日程でmicro TESEができる専門医がすぐ見つかる、という流れですが、なかなかそういったことは困難です。このようなことから、新鮮な精巣精子を用いる顕微授精よりも、凍結した精巣精子を顕微授精に使う、ということが多いというわけなんですね。

 

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