生活習慣の改善と並行して行う薬物療法

高血圧は、“病気”であるため、放置してはならないものである

これまで説明したように、生活習慣の改善によって、血圧は正常レベルに下がる可能性があります。しかし、厚生労働省の国民健康・栄養調査によると、実際に高血圧である人は、5000万人以上にもなるという推計があります。この数字は、現在最多数であるといわれている糖尿病患者とその予備軍の2倍以上の数となっています。

高血圧の人は、40歳ごろから増加してきます。例えば、60歳を過ぎた男性の3人に2人は高血圧症です。正常血圧の人の方がむしろ少ないくらいなのです。それにもかかわらず、生活習慣を改善するわけでもなく、高血圧を放置している人が多いのです。

確かに、今日、誰しも、その日その日の生活に追われ、生活改善など、考える余裕もないともいえます。しかし、高血圧を放置すれば、老後にそのつけが回ってくることは明白です。高血圧症は、しっかりと管理すべき病気であるといえるのです。

高血圧症の人のうち、医療機関にかかって薬物治療を受けている人は、1500万人程度です。そればかりでなく、薬物治療を受けていても、目標の血圧まで、しっかりと降圧できている人は、その半分の750万人程度であるといわれています。

医学的研究の成果であるところの高血圧治療の恩恵の多くは、かならずしも一般的に十分に理解されているとはいえないのです。

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薬物治療は安全で有効だが、血圧はゆっくり下げること

薬物治療の説明を受けた場合、

①     薬を服用するのは面倒である

②     病人のように薬漬けになりたくない

③     定期的に診療を受けたくない

④     何時まで薬を服用し続ければよいのか

⑤     薬は一度始めると、一生辞められない

などといった、拒絶反応を示す人もいます。

しかし、仮に、定年間近になって、QOL(生活の質)を著しく下げる病気になってしまった場合を考えてみましょう。

自身のことを自分で判断できない認知症、体の動きが思うようにいかない半身不随、思考力・判断力の低下、口をきくことができなくなる失語症、不整脈や労作時の息切れ・動悸・脱力感などの慢性心不全、腎障害による透析、最悪の場合、若くして突然死に至るなど、取り返しのつかない事態になってからでは遅いのです。

最近の薬剤の多くは、一日一回程度服用すれば、安全かつ有効な降圧効果を得ることができます。まれに、特別な高血圧性緊急症、急性肺水腫、脳出血、多臓器不全などの救急救命を要する急性の血圧の上昇に至る二次性高血圧の人もいます。

しかし、大概の高血圧症は、慢性的に何年もの時間をかけて上昇していきます。降圧剤で治療をする場合、1か月、ないし、数か月かけて、血圧を徐々に目標値まで下げていくのが適当であるといわれています。

人体は、血圧が高い場合、その状態に適応しているので、一気に降圧するよりは、徐々にゆっくりと下げていくのがよいとされているのです。

 

薬で血圧が下がっても、不可欠である生活習慣の改善

薬物治療を始め、血圧が基準値まで下がると、安心してしまい、生活改善の努力を怠る人がでてくるものです。

薬さえ飲んでいれば、血圧は制御できるのであるから、多少のことは構わないであろうと、塩分の多い食事に戻ったり、運動をサボったりして、肥満解消の努力を怠ってしまうのです。

しかし、こうした姿勢では、薬の長期に亘る十分な効果の発揮は見込めません。そして、なにより、高血圧症以外の重大な生活習慣病にかかるリスクが高くなってしまうのです。

高血圧症を治療するには、あくまで食事や運動などの生活習慣の基本が大切だということをおぼえておく必要があります。

薬物治療は、その前提の上に成り立つもので、治療を進めていく場合には、この二つの要素が車の両輪のような役割を果たします。そのいずれかが欠けても、治療はできないのです。この点につき、正しく認識しておく必要があるといえるでしょう。

 

薬物治療は医師の指示に従うこと

過去半世紀のうちに、高血圧症に用いられる降圧治療薬の種類は画期的な進歩を遂げました。

従来は、副作用が問題とされ、降圧利尿薬が広く使われてきましたが、これは時に、糖尿病の悪化、高尿酸血症、脱水症状や電解質の均衡の乱れなどを引き起こします。しかし、近ごろでは、有効性が高まり、安全性に優れた薬剤を使うことができるようになりました。

医師は、こうした薬剤の様々な特徴を理解したうえで、患者の状態や合併症の有無なども考慮し、最適の薬を処方します。薬物治療を開始した場合、医師の指示をしっかり遵守して服用するようにしましょう。

また、自身の服用している薬の特徴を知っておくことも、治療を進めるうえでは、大切なことであるといえるでしょう。

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